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外務専門職をめざして

国際法・憲法判例、要旨まとめ、経済学等試験勉強のため。国際関係学、ロシア等に関する個人的意見。助言、訂正お願いします。

法の一般原則の法源性

問題提起

国際法の法源には形式的法源実質的法源の二種類があるが、法の一般原則は条約、慣習国際法ともに形式的法源と呼べるか。また、法の一般原則は実質的法源として機能しているか。

 

理由

第一に、国際司法裁判所規定38条は条約、慣習国際法以外に「文明国が認めた法の一般原則」を裁判の準則として認めている。しかし、裁判の準則であることが国際法の法源であるという理由にはならず、一般的に法の一般原則は、この国際司法裁判所規定のように条約によって法源性を認められているか慣習国際法になっていないかぎり、法源性は認められないため、法的拘束力を持つ国際法規則としての形式的法源とは呼び難い。

第二に、法の一般原則が国際法規則の存在を立証するための根拠となり、形式的法源への可能性をもつ補足手段として実質的法源の役割を果たしているかどうかであるが、法の一般原則としての「国際法違反の国際責任原則」や「信義誠実の原則」、「裁判の既判力」などが実質的法源性をもつと判例でも証明されている。

 

判例

 

  • 国際法違反の責任原則

ホルジョウ工場事件-常設国際司法裁判所判決・1926年5月

(事案)

第1次世界大戦後、ドイツからポーランドに割譲されたホルジョウにあった窒素工場をポーランドが収用したことに関して、ドイツは常設国際司法裁判所に提訴した。

 

(判旨)

管轄権に関するポーランドの先決的抗弁を退け、ホルジョウ工場の収用がジュネーブ条約違反であることを認めた。また、約束の違反が適当なかたちで賠償をなす義務をともなうことは国際法上の原則であるとして、国際責任の原則を提示した。

 

 

  • 信義誠実の原則・禁反言(エストッペルの原則)

東部グリーンランド事件-常設国際司法裁判所判決・1933年4月5日

(事案)

1931年、グリーンランド東部の無人地帯にノルウェーの捕鯨業者が上陸した後、ノルウェー政府がデンマークのグリーンランドにおける植民地支配は人が住んでいる地域に限られるとして、その地が無主地であったことを根拠に領有権を主張したことに対し、デンマークは自国の領有権がグリーンランド全土に及んでいるとして常設国際司法裁判所に提訴した。

 

(判旨)

ノルウェー外相イーレンがデンマークとの外交文書の交換の中で「当該問題の解決にいかなる困難ももたらさない」と宣言したことによって、禁反言の原則からノルウェーはデンマークの東部グリーンランドの主権を争うことを控える義務がある。

 

※禁反言「一方の自己の言動により他方がその事実を信用し、その事実を前提として行動した他方に対し、それと矛盾した事実を主張することを禁ぜられる。」

 

考察

法の一般原則を法的拘束力を持つ国際法規則としての形式的法源としては認められないが、「国際法違反の国際責任原則」や「信義誠実の原則」、「裁判の既判力」など、国際法規則の存在を立証するための根拠となり、形式的法源への可能性をもつ補足手段としての実質的法源性はもつと考えられている。