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外務専門職をめざして

国際法・憲法判例、要旨まとめ、経済学等試験勉強のため。国際関係学、ロシア等に関する個人的意見。助言、訂正お願いします。

条約の解釈手段と根拠

問題提起

条約の明文も、締結後の事情や目的の変化により、様々な解釈が可能となってくる。解釈が不当になされ、乱用されることにより条約の意義が失われることがないように、どのような考えが国際法上用いられているか。また、それは慣習国際法化しているといえるか。

 

理由

第一に、条約法条約31条1項は「条約は、文脈によりかつその趣旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味に従い、誠実に解釈するものとする」としている。ここで解釈方法について3点が挙げられる。

  • 文脈による主観的判断
  • 趣旨及び目的に照らした実効性に基づく判断
  • 通常の意味による客観的判断

第二に、条約解釈の根拠として挙げられるものは条約法条約31条2・3項で示された6点である。

  • 条約
  • 関係文書
  • 関係合意
  • 条約の解釈または適用に関する当事国間で後にされた合意
  • 条約の解釈または適用に関する後からの慣行
  • 国際法関連規則

また、条約法条約32条では以上の6点に基づく解釈のみでは意味があいまいな場合、及び常識に違反し、不合理な結果をもたらす場合に関し、補足的な手段のみに限って次の2点を認めた。

  • 条約締結の準備作業
  • 条約締結の際の事情

 

判例

リビア=チャド領土紛争事件-国際司法裁判所判決・1994年2月3日

(事案)

リビアは1955年、フランスと善隣友好条約を締結し、植民地から独立したが、この条約はリビアとフランス領赤道アフリカとの境界も規定していた。1960年に同じくフランス領より独立したチャドはフランス領赤道アフリカの一部であった。1973年にリビアはフランス・イタリア間で1935年の条約に基づき、チャドとの国境沿いのアウズ地帯を軍事占領した。この問題で両国は交渉に困難を見出し、国際司法裁判所に付託した。

 

(判旨)

リビアはアウズ地帯領有の正当性として、1955年のフランスとの善隣友好条約の期限が20年であり、期限切れである点、また規定にある「国境を承認する」とはすでに確定した国境のみを指し、確定していない国境については意味していないものであることを主張している。

まず、前者に関して、条約には定められた国境が暫定的であるとする文言は一切無い。国境は条約と運命を共にせず、一度合意されれば、国境は恒久性を持つ。さもなければ、国境の安定性という原則を欠くことになるからである。後者に関して、条約法条約31条は「条約は文脈によりかつその趣旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味に従い誠実に解釈するものとする」と定め、また、32条では補足的手段として条約の準備作業や締結の際の事情に依拠することが出来るとされている。用語の通常の意味を用い、誠実に解釈すれば、「国境を承認する」という文における国境は全ての国境を指す。また、1955年のフランスとの善隣友好条約が具体的に定めた国境については条約の準備作業に拠って確認できる。

 

 

結論

解釈が不当になされ、乱用されることにより条約の意義が失われることがないように、条約法条約は31条、32条で、条約の解釈は、正当な根拠としての条約、関係文書、関係合意、当事国間で後にされた合意、後からの慣行、国際法関連規則、またその補足手段としての準備作業、締結の際の事情を、文脈による主観的判断、趣旨及び目的にそう実効性の有無、通常の意味による客観的判断の3点に着目してなされなければならないとした。

また、この条約法条約31,32条に関する規定は、リビア=チャド領土紛争事件国際司法裁判所判決において、慣習国際法化しているとみなされた。