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外務専門職をめざして

国際法・憲法判例、要旨まとめ、経済学等試験勉強のため。国際関係学、ロシア等に関する個人的意見。助言、訂正お願いします。

国際組織の決議の法源性

問題提起

国際法の法源には形式的法源実質的法源の二種類があるが、国際組織の決議は条約、慣習国際法ともに形式的法源と呼べるか。または、実質的法源として機能しているか。対外的決議対内的決議ではその性質は異なるか。

 

理由

第一に、ソフトロー理論のように国連総会決議が加盟国に一定の限度を定めたり、指針を示す点で形式的法源性を認め、法的拘束力を持たせようとするものもあるが、国際組織の決議は国連憲章13条が「総会は、次の目的のために研究を発議し、及び勧告をする。」と定義するようにあくまでも勧告にすぎず、形式的法源性はないといえる。

 

※ソフトロー理論

  • ソフトローの定義

Most Resolutions and Declarations of the UN General Assembly

Elements such as statements, principles, codes of conduct, codes of practice etc.; often found as part of framework treaties;

Action plans (for example, Agenda 21);

Other non-treaty obligations

(訳)国連総会のほとんどの決議や宣言

   声明、原則、行動規範や実効性の規範といった要素;頻繁に枠組み条約の一部として

   行動計画(例、アジェンダ21)

   その他の非条約義務

 

第二に、国連総会決議は、1948年の世界人権宣言が1966年の国際人権規約条約として条約化したように、ハードローとして条約として実現する発端となりうること、また慣習国際法となるための法的信念を創出する点で、形式的法源を作るもとになれる。よって実質的法源性は有しているといえる。

 

(判例)

核兵器使用・威嚇の合法性事件-国際司法裁判所判決・1996年7月8日(百選109事件)

(判旨)

国連総会決議は法的拘束力を持たない勧告にすぎないが、規範的価値を持つことはありうる。一定の状況下で総会決議は法的信念の形成の根拠となりうる。

 

最後に、以上のように対外的な総会決議に関しては実質的法源性をもつ可能性を秘めているといえるが、対内的決議に関してはどうか。対内的決議は内部の事務処理、組織の規則等に関するものであるため、一定の法的拘束力をもつが、それらは決議によるものではなく、基本条約にもとづくものであるため、決議自体にこの場合において、法源性を認められるとは言えない。

 

※安全保障理事会の決議の法源性

国連安全保障理事会の決議には法的拘束力があるが、これは国連憲章25条によるものであり決議自体に法源性を認めることはできない。

 

考察

国際組織の決議は、その対外的決議において、形式的法源とはみなすことはできないが、しばしば実質的法源性を認めることはできる。ただし、それに当てはまるかどうかは内容及び条件を考察する必要があり、法的信念の存在についても考える必要がある。